ガイ・フォークス

ガイ・フォークスはイングランド王室を狙った火薬陰謀事件の実行犯です。彼の家は英国国教会の信徒でしたが、母親の家系がカトリックで、母親の再婚相手もカトリック教徒だったために、彼もカトリック教徒として育ちました。成人すると軍人となり、八十年戦争など一連の大陸での戦いには、カトリック側の下級将校として参戦。
1604年にロバート・ケイツビーのグループに入り、国教会を優遇する国王ジェームズ1世を暗殺して、エリザベス・ステュアートを王位につける陰謀に加担します。
彼等は国王が出席する上院の開院式を国王もろとも爆薬で吹き飛ばすテロを計画。トンネルを掘ってウエストミンスター城の議事堂地下室に爆薬を運びこむことに成功するも、爆薬は湿気ってしまったため、やり直しを余儀なくされました。
実行日に定めた1605年11月5日、フォークスが爆薬に点火して脱出する手はずとなっていました。しかしその日の未明、爆薬とともに潜んでいたガイ・フォークスは、治安判事トマス・ナイヴェットに発見されます。ナイヴェットは、事前にモンティーグル卿に届いた密告の手紙をもとに調査していたもので、ガイ・フォークスは逮捕されました。フォークスは「ジョン・ジョンソン」を名乗り、暗殺計画を認めますが、組織については黙秘。しかしロンドン塔に収監され拷問を受けた結果、組織と計画の全貌を自供。翌年裁判でメンバー全員が死刑判決となり、1606年1月31日、生きたまま行われる過酷な刑執行を恐れたフォークスは、処刑台から飛び降り、首の骨を折って死亡しました。
イングランドでは、11月5日は、陰謀が明らかになり、国王が無事だったことを祝う日となります。毎年この日の夜に、市民は篝火を焚き、花火を打ち上げるようになり、やがてフォークス人形を燃やすようになります。いつしかこの行事は本来の趣旨から外れてお祭りとなっていきました(ガイ・フォークス・ナイト)。彼の評価も極悪人から道化っぽいキャラクターになっていき、「ガイ」は奇妙な格好をする人の意味に変化していきます。
さらに19世紀後半になると、大衆小説などで主人公として描かれるようになり、むしろヒーローのイメージが広がります。それに合わせてガイも「男性」を意味するようになりました(タフガイなどのガイ)。
1980年代にはイギリスのSFコミック「Vフォー・ヴェンデッタ」がヒット。映画化もされ、作中で全体主義国家に抵抗する主人公がかぶるガイ・フォークスのマスク(立派な髭を蓄え、気味の悪い笑みを浮かべた顔)は、抵抗運動の象徴的なものとみなされるようになります(※)。現在、アノニマスやウィキリークスなどの反権力運動のメンバーがしばしばこのマスクを付けて顔を隠すのもこの流れです。「ガイ・フォークス」はいまや独自の文化に発展したといえるでしょう。
※Vフォー・ヴェンデッタの主人公Vは、全体主義と戦う人物だがテロリストでもあり、必ずしも正義とはいえない。

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